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  • 黒柿 床柱 孔雀杢

    黒柿の孔雀杢(クジャクモク)とは?|杢について

    日本有数の銘木、黒柿。

    黒柿は柿の木の中で1万本に1本と言われるほど希少性が高く、珍しい存在です。

     

    その黒柿のなかでも、杢(もく)と呼ばれる模様や種類によって、その評価は大きく分かれます。

    今回は、黒柿の中で最も評価される孔雀杢という杢の紹介をしていきます。

     

    * 黒柿についての基礎情報はこちらの記事からご覧ください。

    黒柿(クロガキ)とは?


    1.孔雀杢とは?

    2.孔雀杢の希少性

    3.黒柿(孔雀杢)の応用の歴史

    4.なぜ、杢が入るのか?

    5.経年変化

    6.緑の孔雀杢とは?

     

     

    1.孔雀杢とは?

    ◆語源

    孔雀杢は、黒柿に見られる杢の種類の名称です。

    文字の通り、キジ科の鳥類である、孔雀(クジャク)が語源とされています。

     

    ◆由来

    名前の由来としては、孔雀(オス)の羽根が孔雀杢の模様に類似していることと、杢入りの黒柿が大変貴重な木材であり、孔雀という高貴な鳥の名を杢の名称に冠することで、その希少性の尊さを表していると考えられています。

    出典)Wikipedia 孔雀 山翔銘木堂_黒柿孔雀杢の床柱

     

    2.孔雀杢の希少性

    ◆2〜3万本に1本

    黒柿が出る確率は1万本に1本と言われており、その黒柿に孔雀杢が入る確率は2万本に1本。特上の物になると3万本に1本という途方もない希少性を秘めています。

     

    ◆寸法(サイズ)

    一般的には床柱や床框として多く用いられ、古くは茶入や馬の鞍など小面積の部材としても使用されてきました。

    その中で、最も大きな面積を必要とするのは床柱であり、規格として最も大きな寸法は2間(3.636m)の長さを必要とし、幅奥行きは6寸(18cm)の床柱がおおよそ最大の寸法と言えます。

    但し、前回の記事(黒柿とは?)でも記載した通り、黒柿は大きな寸法を取得するのが極めて難しい木材として知られているため、黒柿の孔雀杢で大きなサイズの物は非常に希少性が高いということになります。

     

    3.黒柿(孔雀杢)の応用の歴史

    ◆高貴な位の方が憧れる存在

    黒柿の孔雀杢は正倉院に宝物として多く収蔵されており、文机や馬の鞍に用いられるなど古くから皇室や貴族など高貴な方が用いてきた皇統に伝わる銘木として知られています。

     

    正倉院の中倉に納められている宝物の一つ、黒柿金銀絵廿八足几は儀式に用いられた高台机です。脚の本数が多く、両脚で28本の細長い脚で天板を支えています。

    天板自体は杉ですが、四方の框を黒柿で廻し、脚や地摺にも黒柿が用いられています。側面などには、金銀泥で花弁や鳥・蝶を描き、金銀彩絵を施しており、大変手の込んだ作品です。

     

    儀式・儀礼の場において、大変高貴な方が用いており、高位の象徴として見える部分に黒柿を使用しているとも考えられます。

    黒柿が当時から非常に権威を表す銘木だったことが分かります。

    黒柿金銀絵廿八足几 正倉院中倉蔵(参照:宮内庁HP正倉院宝物

     

    馬の鞍は騎馬のための装具として、最も大切な部材・鞍橋(くらぼね)と呼ばれる部分に黒柿が使われています。側面から見ると立派な黒柿孔雀杢の木材を利用していることが分かります。鞍橋は強固な材料で製作する必要があり、黒柿が耐久性や硬さに定評があることを当時の方々は知っていたことになります。

     

    当時としては、馬に乗れる身分の方は限られるため大変高貴な方が乗馬なさる際に使われたと考えられます。位の高い方が如何に黒柿を重宝していたかが窺い知れます。

    馬鞍3号 正倉院中倉蔵(参照:宮内庁HP正倉院宝物) 馬鞍3号側面 正倉院中倉蔵(参照:宮内庁HP正倉院宝物

     

    ◆数寄者が好む存在

    江戸時代に入り、数寄者として名高い松平不昧が黒柿の美を見出し、お茶の世界でも用いたとされています。また、江戸時代以降は数寄屋造りの建築に床柱や框材として使用されるようになりました。

    黒柿孔雀杢の床框 数寄屋造り(洋々閣) 黒柿孔雀杢の床框

     

    4.なぜ、杢が入るのか?

    ◆タンニンの影響

    通常は白い材質の柿の木に、黒が入る原因として考えられるのは柿渋に含まれるタンニンが木材内部で染み出す影響かと考えられています。

    しかしながら、そのタンニンが杢を形成し、連続する斑点模様を作り上げる理由については正確な結論が出ておらず、孔雀杢が入る理由について明確な解が出ていないのが現状です。

     

    5.経年変化

    ◆時間が経っても薄れない濃い色調

    通常、木材は経年によって色味が変化します。空気に触れて酸化することや、太陽光による紫外線など様々な影響を受けます。

    そのような木材が多い中で、黒柿は時間が経っても色味が損なわれず、白太(しらた)の白さと、黒の強さと孔雀杢の品など美しい姿は失われません。

    山翔銘木堂_黒柿孔雀杢の床柱

     

    一部地域では、シャム柿を黒柿として販売しているところもあります。

    シャム柿の場合、経年変化により白太が赤みを帯び、全体的に茶褐色系統の色調が強いので、黒柿とは見た目から異なります。

    ※シャム柿と黒柿は全く別の木材です。

     

    6.緑の孔雀杢とは?

    ◆孔雀杢に緑色が入る

    稀に孔雀杢の中に緑色が入ることが確認されています。深緑や暗緑色といった濃い緑色が孔雀杢の輪郭に沿って入ります。

    タンニンが影響しているかは不明ですが、タンニンにはタンパク質や金属イオンも含まれているため、空気中の物質や湿度など環境の変化によって得られる後天性の反応なのか、育成中に反映されているのか、まだ答えは出ていません。

    大変数が少なく、育成中には黒柿かどうかすら確かめる術がないため、今後も謎に包まれたままかもしれませんが、孔雀杢には自然が生み出す景色の豊かさ、面白さが詰まっているように思います。

    黒柿孔雀杢(緑)

     

     

     

    弊社が扱っている黒柿の商品については、こちらをご覧ください

    → 黒柿商品一覧

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    黒柿(クロガキ)とは?|木材紹介

    日本有数の銘木の一種、黒柿(クロガキ)。

    正倉院御物、或いは聖徳太子ゆかりの秘宝として黒柿の歴史は古くから伝えられているが、そもそも黒柿とはどんな木なのか。その魅力を今回は探っていきます。


    1.黒柿とは、どのような樹なのか?


    2.木材としての特徴


    3.保管・管理の難しさ

     

    1.黒柿とは、どのような樹なのか?

    ◆科目/属性

    黒柿は通称であり、“黒柿”という樹の科目属性があるわけではありません。

    樹の種類としては“柿の木”で、カキノキ科・カキノキ属に分類されます。

     

    通常の柿の木は製材した際、橙色〜淡黄色に近い色味をしています。

    しかしながら、稀に墨色のような黒色が樹の中心部に入ることがあります。これを黒柿と呼びます。

    黒柿が出る確率は1万本に1本とも言われ、非常に貴重で高価な存在です。

    黒柿の丸太(丸太中心部に黒い放射状の線が入っている)

     

    ◆何故、黒くなるのか?

    各種研究機関においても推論の域を出ていませんが、樹齢150年以上の老木にしか出ないことは共通しているため、柿渋の元である“タンニン”が変色し、元々白い樹である柿の木に黒が入るのではないかと考えられています。

     

    ◆産地

    柿の産地としては、本州、四国、九州と広く分布しており、和歌山県・奈良県・福岡県では特に出荷の多い都道府県として知られています。潮風に強い樹でもあるので、本州では幅広く生えています。

     

    黒柿が特に多い産地というのは無いようです。また、立っている段階では黒柿かどうか判別する方法がないため、切られて初めて黒柿かどうか判明します。

     

    ◆種類

    落葉広葉樹で、12月頃には葉も実も落ち、初春に新芽が開き始め初夏には緑色の花が咲く。葉は緑が非常に濃く、飲用の柿の葉茶として有名です。梅雨頃から育ち始める実は秋頃に鮮やかな橙色に染まり、実りを迎えます。

    2月頃の柿の木_完全に落葉している

     

    ◆樹形

    空に向かって真っ直ぐ育つことは珍しく、大抵の木は横や斜めなど捻れながら育ちます。

    また、折れやすい樹ですので、植木屋泣かせの樹としても知られています。

     

    ◆防腐剤としての利用

    渋柿を絞って発酵・熟成させたものを“柿渋”として、古来より防腐剤として使用されてきました。

     

    2.木材としての特徴

    ◆硬さ

    広葉樹ですので、割と硬い種類です。

    しかし、捻れながら育つ影響もあり、製材乾燥後も小さな割れなどが生じやすいため、乾燥や管理が非常に大切です。

     

    ◆製材の難しさ

    捻れて育つため、とにかく製材の難易度が高いことが材木屋泣かせの一つであり、腕の見せ所でもあります。

    大抵が直径50cmほどと割と小ぶりな丸太が多く、幅が広く、長いものは大変珍しく貴重。

    しかし、どんなに貴重な丸太を入手できても捻れて育っていると長く採ることが出来ない。こういった難しさもあり、長くて幅広い、ましてや黒柿となると希少性が増すのです。

    黒柿の丸太

     

    ◆杢の美しさ

    黒柿には、墨絵のような黒色が螺旋状に不均一に入ることで、唯一無二の景色が生まれます。

    この黒柿が醸し出す魅力に惹かれ、聖武天皇の時代から天皇家に近い方々や相国寺(京都)の総黒柿の書院造、茶道具として多くの貴族・文化人・大名茶人の間で求められるようになりました。

    黒柿杷蘇芳染金銀絵鞘小刀(法隆寺献納宝物).奈良時代(8世紀)

     

    3.保管、管理の難しさ

    ◆虫食いから身を守る

    運よく製材で幅が広く長い黒柿が採れたとしても、黒柿には製材する前に非常に大切な過程があります。

    それは、丸太を乾燥させる時の保管・管理です。

     

    黒柿(柿の木)は、樹皮に近い部分(白太)に虫(木食い虫)が付きやすく、虫に食われると穴が空き、見栄えの悪さと脆さに繋がります。

    虫食いの穴(黒柿)

     

    虫食いの穴(黒柿)

     

    そこで、先人達は美しい黒柿を手にするため、まず貯水槽に沈めて害虫を防ぎます。

    貯水槽@ヤトミ製材様

     

    一定期間を終えると貯水槽から引き揚げ、次はコモ藁(コモわら)で丸太全体を覆い、徐々に水分を抜きながら、じっくりと乾燥させていきます。

    ※私が仕入させて頂いた銘木屋様では実に10年間、コモ藁で巻いた状態で乾燥させた後に、製材し見事な黒柿孔雀杢の床柱に仕立てられました。

     

    通常の木材でも乾燥は勿論重要ですが、丸太の状態で乾燥させておくと中が蒸れて腐ってしまったり、ダメになるケースが多いので、初めてこの方法をお聞きした時には大変驚きました。

     

    【あらゆる苦難を乗り越えて完成】

    ①黒柿の出現率は、1万本に1本の確率

    ②長さ、幅を極限まで残しつつ、黒柿の杢目を全面に出せるか?

    ③虫食いや割れなどの欠点がないか?

     

    これらの条件をクリアして、ようやく黒柿の特別な木材が完成すると考えると大変貴重だということが窺い知れます。

    また、この黒柿の杢を如何に残せるか?この点においては、数多くの先人達の知恵で成立している領域です。

    数が少ないだけに経験して伝承する難しさはありますが、日本の銘木屋さんの伝統が詰まった貴重な経験値を残していく必要性も感じます。

     

    黒柿の中には、更に最上級クラスの孔雀杢(くじゃくもく)、鶉杢(うずらもく)、網目杢(あみめもく)という種類があります。こちらについては、次回以降の記事でご紹介していきます。

     

    弊社が扱っている黒柿の商品については、こちらをご覧ください