日本有数の銘木の一種、黒柿(クロガキ)。
正倉院御物、或いは聖徳太子ゆかりの秘宝として黒柿の歴史は古くから伝えられているが、そもそも黒柿とはどんな木なのか。その魅力を今回は探っていきます。
1.黒柿とは、どのような樹なのか?
2.木材としての特徴
3.保管・管理の難しさ
◆科目/属性
黒柿は通称であり、“黒柿”という樹の科目属性があるわけではありません。
樹の種類としては“柿の木”で、カキノキ科・カキノキ属に分類されます。
通常の柿の木は製材した際、橙色〜淡黄色に近い色味をしています。
しかしながら、稀に墨色のような黒色が樹の中心部に入ることがあります。これを黒柿と呼びます。
黒柿が出る確率は1万本に1本とも言われ、非常に貴重で高価な存在です。
◆何故、黒くなるのか?
各種研究機関においても推論の域を出ていませんが、樹齢150年以上の老木にしか出ないことは共通しているため、柿渋の元である“タンニン”が変色し、元々白い樹である柿の木に黒が入るのではないかと考えられています。
◆産地
柿の産地としては、本州、四国、九州と広く分布しており、和歌山県・奈良県・福岡県では特に出荷の多い都道府県として知られています。潮風に強い樹でもあるので、本州では幅広く生えています。
黒柿が特に多い産地というのは無いようです。また、立っている段階では黒柿かどうか判別する方法がないため、切られて初めて黒柿かどうか判明します。
◆種類
落葉広葉樹で、12月頃には葉も実も落ち、初春に新芽が開き始め初夏には緑色の花が咲く。葉は緑が非常に濃く、飲用の柿の葉茶として有名です。梅雨頃から育ち始める実は秋頃に鮮やかな橙色に染まり、実りを迎えます。
◆樹形
空に向かって真っ直ぐ育つことは珍しく、大抵の木は横や斜めなど捻れながら育ちます。
また、折れやすい樹ですので、植木屋泣かせの樹としても知られています。
◆防腐剤としての利用
渋柿を絞って発酵・熟成させたものを“柿渋”として、古来より防腐剤として使用されてきました。
◆硬さ
広葉樹ですので、割と硬い種類です。
しかし、捻れながら育つ影響もあり、製材乾燥後も小さな割れなどが生じやすいため、乾燥や管理が非常に大切です。
◆製材の難しさ
捻れて育つため、とにかく製材の難易度が高いことが材木屋泣かせの一つであり、腕の見せ所でもあります。
大抵が直径50cmほどと割と小ぶりな丸太が多く、幅が広く、長いものは大変珍しく貴重。
しかし、どんなに貴重な丸太を入手できても捻れて育っていると長く採ることが出来ない。こういった難しさもあり、長くて幅広い、ましてや黒柿となると希少性が増すのです。
◆杢の美しさ
黒柿には、墨絵のような黒色が螺旋状に不均一に入ることで、唯一無二の景色が生まれます。
この黒柿が醸し出す魅力に惹かれ、聖武天皇の時代から天皇家に近い方々や相国寺(京都)の総黒柿の書院造、茶道具として多くの貴族・文化人・大名茶人の間で求められるようになりました。
◆虫食いから身を守る
運よく製材で幅が広く長い黒柿が採れたとしても、黒柿には製材する前に非常に大切な過程があります。
それは、丸太を乾燥させる時の保管・管理です。
黒柿(柿の木)は、樹皮に近い部分(白太)に虫(木食い虫)が付きやすく、虫に食われると穴が空き、見栄えの悪さと脆さに繋がります。
そこで、先人達は美しい黒柿を手にするため、まず貯水槽に沈めて害虫を防ぎます。
一定期間を終えると貯水槽から引き揚げ、次はコモ藁(コモわら)で丸太全体を覆い、徐々に水分を抜きながら、じっくりと乾燥させていきます。
※私が仕入させて頂いた銘木屋様では実に10年間、コモ藁で巻いた状態で乾燥させた後に、製材し見事な黒柿孔雀杢の床柱に仕立てられました。
通常の木材でも乾燥は勿論重要ですが、丸太の状態で乾燥させておくと中が蒸れて腐ってしまったり、ダメになるケースが多いので、初めてこの方法をお聞きした時には大変驚きました。
【あらゆる苦難を乗り越えて完成】
①黒柿の出現率は、1万本に1本の確率
②長さ、幅を極限まで残しつつ、黒柿の杢目を全面に出せるか?
③虫食いや割れなどの欠点がないか?
これらの条件をクリアして、ようやく黒柿の特別な木材が完成すると考えると大変貴重だということが窺い知れます。
また、この黒柿の杢を如何に残せるか?この点においては、数多くの先人達の知恵で成立している領域です。
数が少ないだけに経験して伝承する難しさはありますが、日本の銘木屋さんの伝統が詰まった貴重な経験値を残していく必要性も感じます。
黒柿の中には、更に最上級クラスの孔雀杢(くじゃくもく)、鶉杢(うずらもく)、網目杢(あみめもく)という種類があります。こちらについては、次回以降の記事でご紹介していきます。
弊社が扱っている黒柿の商品については、こちらをご覧ください
日本有数の銘木の一種、黒柿(クロガキ)。
正倉院御物、或いは聖徳太子ゆかりの秘宝として黒柿の歴史は古くから伝えられているが、そもそも黒柿とはどんな木なのか。その魅力を今回は探っていきます。
1.黒柿とは、どのような樹なのか?
2.木材としての特徴
3.保管・管理の難しさ
1.黒柿とは、どのような樹なのか?
◆科目/属性
黒柿は通称であり、“黒柿”という樹の科目属性があるわけではありません。
樹の種類としては“柿の木”で、カキノキ科・カキノキ属に分類されます。
通常の柿の木は製材した際、橙色〜淡黄色に近い色味をしています。
しかしながら、稀に墨色のような黒色が樹の中心部に入ることがあります。これを黒柿と呼びます。
黒柿が出る確率は1万本に1本とも言われ、非常に貴重で高価な存在です。
◆何故、黒くなるのか?
各種研究機関においても推論の域を出ていませんが、樹齢150年以上の老木にしか出ないことは共通しているため、柿渋の元である“タンニン”が変色し、元々白い樹である柿の木に黒が入るのではないかと考えられています。
◆産地
柿の産地としては、本州、四国、九州と広く分布しており、和歌山県・奈良県・福岡県では特に出荷の多い都道府県として知られています。潮風に強い樹でもあるので、本州では幅広く生えています。
黒柿が特に多い産地というのは無いようです。また、立っている段階では黒柿かどうか判別する方法がないため、切られて初めて黒柿かどうか判明します。
◆種類
落葉広葉樹で、12月頃には葉も実も落ち、初春に新芽が開き始め初夏には緑色の花が咲く。葉は緑が非常に濃く、飲用の柿の葉茶として有名です。梅雨頃から育ち始める実は秋頃に鮮やかな橙色に染まり、実りを迎えます。
◆樹形
空に向かって真っ直ぐ育つことは珍しく、大抵の木は横や斜めなど捻れながら育ちます。
また、折れやすい樹ですので、植木屋泣かせの樹としても知られています。
◆防腐剤としての利用
渋柿を絞って発酵・熟成させたものを“柿渋”として、古来より防腐剤として使用されてきました。
2.木材としての特徴
◆硬さ
広葉樹ですので、割と硬い種類です。
しかし、捻れながら育つ影響もあり、製材乾燥後も小さな割れなどが生じやすいため、乾燥や管理が非常に大切です。
◆製材の難しさ
捻れて育つため、とにかく製材の難易度が高いことが材木屋泣かせの一つであり、腕の見せ所でもあります。
大抵が直径50cmほどと割と小ぶりな丸太が多く、幅が広く、長いものは大変珍しく貴重。
しかし、どんなに貴重な丸太を入手できても捻れて育っていると長く採ることが出来ない。こういった難しさもあり、長くて幅広い、ましてや黒柿となると希少性が増すのです。
◆杢の美しさ
黒柿には、墨絵のような黒色が螺旋状に不均一に入ることで、唯一無二の景色が生まれます。
この黒柿が醸し出す魅力に惹かれ、聖武天皇の時代から天皇家に近い方々や相国寺(京都)の総黒柿の書院造、茶道具として多くの貴族・文化人・大名茶人の間で求められるようになりました。
3.保管、管理の難しさ
◆虫食いから身を守る
運よく製材で幅が広く長い黒柿が採れたとしても、黒柿には製材する前に非常に大切な過程があります。
それは、丸太を乾燥させる時の保管・管理です。
黒柿(柿の木)は、樹皮に近い部分(白太)に虫(木食い虫)が付きやすく、虫に食われると穴が空き、見栄えの悪さと脆さに繋がります。
そこで、先人達は美しい黒柿を手にするため、まず貯水槽に沈めて害虫を防ぎます。
一定期間を終えると貯水槽から引き揚げ、次はコモ藁(コモわら)で丸太全体を覆い、徐々に水分を抜きながら、じっくりと乾燥させていきます。
※私が仕入させて頂いた銘木屋様では実に10年間、コモ藁で巻いた状態で乾燥させた後に、製材し見事な黒柿孔雀杢の床柱に仕立てられました。
通常の木材でも乾燥は勿論重要ですが、丸太の状態で乾燥させておくと中が蒸れて腐ってしまったり、ダメになるケースが多いので、初めてこの方法をお聞きした時には大変驚きました。
【あらゆる苦難を乗り越えて完成】
①黒柿の出現率は、1万本に1本の確率
②長さ、幅を極限まで残しつつ、黒柿の杢目を全面に出せるか?
③虫食いや割れなどの欠点がないか?
これらの条件をクリアして、ようやく黒柿の特別な木材が完成すると考えると大変貴重だということが窺い知れます。
また、この黒柿の杢を如何に残せるか?この点においては、数多くの先人達の知恵で成立している領域です。
数が少ないだけに経験して伝承する難しさはありますが、日本の銘木屋さんの伝統が詰まった貴重な経験値を残していく必要性も感じます。
黒柿の中には、更に最上級クラスの孔雀杢(くじゃくもく)、鶉杢(うずらもく)、網目杢(あみめもく)という種類があります。こちらについては、次回以降の記事でご紹介していきます。
弊社が扱っている黒柿の商品については、こちらをご覧ください